統計学輪講 第19回

日時 2025年11月11日(火)
14時55分 ~ 15時45分
場所 経済学部新棟3階第3教室 および Zoom
講演者 西田 鴻志 (経済D1)
演題 補償のタイミングが複数あるときの離散選択におけるノンパラメトリック厚生分析
概要

財の価格や質の変化に伴って各個人が受けた便益や損害を金銭的に測るために,補償変分や等価変分といった指標が用いられる.人々の観測されない選好の異質性はこれらの指標の違いをもたらし,その情報を集約した厚生指標の分布関数を人々の現実の選択行動のデータから識別することは重要な課題である.この問題に対して近年,[1]や[2]を中心とした離散選択におけるノンパラメトリック厚生分析の枠組みは,選好の異質性を完全に自由に許容できる方法として注目を集めている.
本研究は,既存研究で想定されてきた一時点での支払いや補償にとどまらず,そのタイミングが複数にまたがる状況を扱う.この枠組みの下で,複数タイミングに即して定義される厚生指標の分布関数について,ノンパラメトリックな点識別が成立する条件を明らかにし,さらに点識別が保証されない一般の設定に対しても適用可能な部分識別の結果を導出する.
[1] Bhattacharya, D. (2015). Nonparametric welfare analysis for discrete choice. Econometrica, 83(2), 617–649.
[2] Bhattacharya, D. (2018). Empirical welfare analysis for discrete choice: Some general results. Quantitative Economics, 9(2), 571–615.