統計学輪講 第4回

日時 2025年04月30日(火)
14時55分 ~ 15時45分
場所 経済学部新棟3階第3教室 および Zoom
講演者 田川 颯人 (経済D1)
演題 スピルオーバー効果を許容した合成コントロール法の識別と推定方法の提案
概要

本研究では、因果推論の手法の一つである合成コントロール法(SCM)を、スピルオーバー効果が存在する状況に対応できるよう拡張した。従来のSCMは、あるユニッ トへの処置が他のユニットに影響を与えないというSUTVA(Stable Unit Treatment Value Assumption)を前提としているが、スピルオーバー効果がある場合は推定にバイアスが生じる可能性がある。
そこで本研究では、空間自己回帰(SAR)パネルデータモデルをSCMに組み込むことで、処置効果とスピルオーバー効果の両方を識別・推定する新しい分析手法を提案する。
また提案手法の実証応用として、以下の2つの分析を行った。

1. カリフォルニア州のタバコ税導入による消費への影響分析: 1988年にカリフォルニア州で導入されたタバコ税(Proposition 99)が、州内のタバコ消費だけでなく、 他の州の消費にも与えた影響を推定した。その結果、タバコ税はカリフォルニア州だけでなく他の州のタバコ消費も減少させた可能性があることを示した。

2. 2011年のスーダン分割による経済的影響分析: 2011年のスーダン南北分割が、旧スーダン地域およびアフリカ諸国の一人当たりGDPに与えた影響を推定した。分析の 結果、分割は(北)スーダンの一人当たりGDPを低下させ、特に経済的な繋がりが強いエジプトやケニアといった国々にも負のスピルオーバー効果を及ぼしたことが明らかとなった 。