統計学輪講 第1回
日時 | 2025年04月08日(火) 14時55分 ~ 16時35分 |
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場所 | 経済学部新棟3階第3教室 |
講演者 | 入江 薫 (経済) |
演題 | 異常値に頑健な線形モデルの事後分析 |
概要 |
線形(回帰)モデルにおいて最小二乗推定量が異常値に対して敏感であるという事実は古くから知られており、その対策については多くの先行研究がありロバスト統計と呼ばれる。一方で、点推定に限らず、区間推定などによる不確実性評価や予測・意思決定を含めた広範な統計的分析を異常値から保護するには、パラメータの点推定量ではなく事後分布のロバスト性を議論する必要がある。この野心的なロバスト性を達成するには、通常のロバスト統計と同様に、裾の厚い誤差分布を用いて異常値を誤差として説明することが重要である。ただし、誤差分布としてよく用いられるStudent's t-分布では裾が十分に厚いとはいえず、対数正規変動関数を用いた(対数項を含むような)密度関数でなければロバスト性を達成できない。これらの性質は2010年代以降の一連の研究によって明らかになっている。 本講演では線形モデルの事後分布のロバスト性について、階層構造をもつ線形モデル、計数データを中心とした一般化線形モデル、多変量線形モデルと共分散の推定という、三つのテーマに分けて解説する。これらの内容は羽村靖之氏(京都大)と菅澤翔之助氏(慶應大)との共同研究に基づく。(Hamura, Irie and Sugasawa 2022 BA; 2022 CSDA; 2024 Stat Probabil Lett; 2025 JASA T&M) |